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    実験設備

    当研究室では、兵庫県播磨のSPring-8東京大学アウトステーションと千葉県柏市の東京大学物性研究所に2つの拠点を持っており、前者では放射光を、後者ではレーザー光を利用した実験を行っています。さらに、国内外の放射光施設での共同利用実験も数多く行っています。

    紫外線〜X線の短波長領域は光を用いた研究の中で最も大きなイノベーションが起きている分野です。かつては赤外〜可視領域に限定されていたコヒーレント光(レーザー光)の技術が、ついにこの領域に到達したのです。当研究室は、これまで培った紫外線・X線分光技術を、テーブルトップの紫外超短パルスレーザー、軟X線の放射光パルス、そして軟X線・硬X線の自由電子レーザーといった様々な新規光源と組み合わせて、物質の超高速ダイナミクスの研究を世界に先駆けて行っています。

1. SPring-8東京大学アウトステーション(BL07LSU)  

兵庫県播磨にある第3世代放射光施設SPring-8には、東京大学が所持するアウトステーションBL07LSUがあります。当研究室は、同じ物性研究所の原田研究室・和達研究室と共同でBL07LSUを整備し、国内外のユーザーとの共同利用実験を遂行しています。BL07LSUは世界で唯一のクロス型アンジュレータを持つビームラインであり、軟X線の偏光をパルスごとに制御する「偏光スイッチング」を行うことができます。
 
2. 時間分解軟X線光電子分光装置(ARTOF)  

SPring-8の東京大学アウトステーションBL07LSUにて当研究室が管理している実験装置です。BL07LSUからの高輝度軟X線パルス(~50 ps, ピコ秒)と超短レーザーパルス(~200 fs, フェムト秒)を組み合わせたポンププローブ時間分解光電子分光測定によって、電子状態・化学状態・原子構造の超高速ダイナミクスを直接モニターすることができます。世界でも珍しい飛行時間型2次元角度分解電子分析器(ARTOF)を使用することで、高効率な時間分解測定が行えます。
 
3. 超伝導マグネット軟X線磁気光学測定装置(KIRIN)  

同じくBL07LSUにて当研究室が管理している実験装置です。特徴的な形からKIRINの愛称で呼ばれています。超伝導マグネットからの磁場と、BL07LSUからの直線偏光・円偏光軟X線を用いることで、磁気円二色性(MCD)・磁気光学カー効果(MOKE)などを用いた元素選択的な磁気測定を行うことができます。さらに、BL07LSUの特徴である偏光スイッチングや、~50 psオーダーの軟X線パルスを用いることで、超高速磁気ダイナミクスの測定を高い効率で行うことができます。
 
4. 雰囲気下軟X線光電子分光装置(AP-XPS)  

BL07LSUにて、同じ東大物性研の吉信研究室と当研究室が共同で管理している装置です。従来光電子分光は超高真空中が必須の手法でしたが、近年、雰囲気下(ambient pressure, AP)での光電子分光技術が急速に発展し、固体表面や気液界面における化学反応中の電子状態を直接観測することが可能になっています。本装置ではさらに、BL07LSUの軟X線パルスと超短パルスレーザーを組み合わせて、デバイスや触媒の動作環境下における超高速過程の解明を目指しています。
 
5. 高次高調波(HHG)レーザー磁気光学測定装置  

千葉県柏市の東京大学物性研究所にて、当研究室が管理している装置です。同じ物性研の板谷研究室と共同で開発した高次高調波(high harmonic generation, HHG)レーザーによって、フェムト秒のスケールで時間分解磁気光学測定を行います。低強度ながらも高い繰り返し周波数で真空紫外〜軟X線領域の超短パルスを生成でき、高強度・低繰り返しの特徴をもつ自由電子レーザーと相補的な実験ができます。実験室の中でフェムト秒・軟X線領域の時間分解実験が行えるのも大きな魅力です。
 
6. 時間分解・スピン分解光電子分光装置  

現在東京大学物性研究所で立ち上げ中の装置です。同じ物性研の小林研究室が開発した高繰り返し紫外超短パルスレーザーと、スピン分解光電子分光を組み合わせ、従来の約1000倍もの効率でスピンダイナミクスを観測できる装置です。時間分解・スピン分解光電子分光装置は世界でもまだ珍しく、国内ではまだ立ち上がっていません。現在急ピッチで立ち上げを進めています。
 
7. 国内外の放射光施設の利用  

当研究室では、上記の装置以外にも、国内外の放射光施設での共同利用実験を活発に行っています。各施設では高性能かつ個性的な装置が整備されており、目的に応じて様々な場所に出張実験に向かいます。とくに、真空紫外〜軟X線領域の自由電子レーザーを用いた物質研究を世界に先駆けて行っています。写真は左上から時計回りに、広島大学HiSORの高分解能角度分解光電子分光装置、台湾NSRRCの高分解能角度分解光電子分光装置、イタリアELETTRAの自由電子レーザーFERMI、ドイツBESSY IIの時間分解軟X線ビームラインです。この他にもつくばのPhoton Factoryや、愛知のUVSOR、フランスのSOLEILなどの様々な放射光施設で実験を行っています。