More Website Templates @ TemplateMonster.com. November19, 2012!


    時間分解磁気光学測定による磁気ダイナミクスの直接観測

    当研究室では、光電子分光に加えて、「磁気光学効果」を利用した磁性相の研究も行っています。とくに、従来の可視光での測定を軟X線領域に拡張した「共鳴磁気光学効果を利用することで、元素選択的かつ巨大なシグナルを得ることができます。さらに当研究室では最先端の光技術であるX線自由電子レーザーと高次高調波レーザーによる超短パルス軟X線を利用して、物質中の超高速磁性ダイナミクスの直接観測も行っています。

    共鳴磁気光学効果

    まず、当研究室が確立してきた共鳴磁気光学効果を簡単に紹介します。これまで磁性材料からの反射光の偏光状態に、その物質の磁化の情報が現れる磁気光学カー効果(Magneto Optical Kerr Effect: MOKE)が伝統的な磁気プローブ手法として用いられてきました。具体的に、MOKEは、入射光の偏光の主軸が回転するカー回転角と、直線偏光の入射光が反射光では楕円偏光になる楕円率と言う物理量で特徴づけられます。従来のMOKEは実験室系において可視光域のレーザーを用いて測定されており、対象試料の平均した磁化情報を得ていました。当研究室では、この可視域のMOKEを軟X線域に拡張しました。使用エネルギーを対象元素の内殻共鳴吸収端に合わせることで、元素選択的な測定が可能になります。この共鳴磁気光学効果(Resonant MOKE: RMOKE)は、可視域に比べて非常に大きな磁気光学応答を持つことが特徴です。実際に、NiのM吸収端において、可視域のMOKEに比べて50倍の磁気光学応答が観測されました[1]。


    超短パルスレーザーを用いた超高速スピンダイナミクス

    上記のRMOKEは、Photon-in & Photon-outの測定セットアップを取り、超高速領域の物性プローブ手法であるポンプ・プローブ法と相性が良く、元素選択的なスピンダイナミクス研究に展開できます。フェムト秒域(1フェムト秒=10-15秒)の軟X線域の超短パルスレーザーは現在、第4世代のX線光源として近年新たに登場した自由電子レーザーと、実験室系における高次高調波レーザーがあります。フェムト秒域は、磁気秩序の根源であるスピン交換相互作用に対応スケールで、基礎的に非常に重要です。また超高速磁気デバイス開発に代表されるスピントロニクス分野においても重要視されています。当研究室では、これまで日本、イタリアの自由電子レーザーを用いたスピンダイナミクス研究を進めてきました。実際、イタリアの自由電子レーザーFERMIを用いて時間分解RMOKEによりGdFeCoのFeの超高速磁化反転現象の元素選択的な観測に成功しました。[2]。


    参考文献

    [1] Sh. Yamamoto et al., Phys. Rev. B 89, 064423 (2014).
    [2] Sh. Yamamoto et al., Rev. Sci. Instrum. 86, 083901 (2015).